「和枝さん、こんにちは」今日もコーチの元気のいい声が店内に響き渡る。
 「そうだ。私は和枝」ここに来ると自分が一人の人間であることに気付かされる。結婚して以来、名字が珍しいため、近所でも職場でも名前で呼ばれたことがない。家庭では「お母さん」、孫からも「ばあば」。それに「はい。はい。」と返事をする私。そうよ。私は「和枝」という名前をもった一人の人間。そんな当たり前のことに気付かせてもらっている。
 
 カーブスに入会したのは一年前。これまでほとんどといっていいほど自分をかまっていなかったから、退職したら自分を大切にしたいという思いで入会した。ちょっと前にケンケン跳びを子供たちとしたときに、まったくと言っていいほどジャンプできない自分にも衰えを感じていた。しかも、ステロイド治療のためか、入会前の一年間で八キロも太ってしまっていた。これまで三十何年も一生懸命に働いてきたのに、退職して病気にでもなったら元も子もない。健康のことを考えなくてはと思った時に真っ先に浮かんできたのがカーブスだった。テレビのCMでの「三十分間フィットネス カーブス」というフレーズが耳に残っていて、「三十分位なら、続けられるかも」とピンときたのだ。
 初めてカーブスの扉を開けたとき、軽快な音楽が流れていた。会員さんは黙々とマシンを動かしたり足踏みをしたりしている。いろいろ説明を受けて、計測をした。「えっ。腹筋ができない」衝撃的だった。学生時代は、ずっとスポーツをしていたので、運動は得意な方であった。体力テストでも結構上位にいた。体の衰えを身をもって感じ、かなりショックを受けた。さらに、追い打ちをかけたのは、体験したスクワットのマシン。「あっ、上がらない」会員の皆さんは、いとも簡単にマシンを動かしているのに・・・。この二つの衝撃により、「やるしかない」と入会を即決した。
 それからというもの、週三回通うことを目標に現在に至っている。体がどう変わっていくかも楽しみであった。しかし、現実は甘くなく、なかなか体重も減らないし体脂肪も筋肉量もさざ波のような変化であった。かつて職場が同じだった方や子供の同級生の親御さんともカーブスで顔を合わせることがあったので、「どう、カーブスに入って効果あった」と聞くと、「健康診断での数値が下がったよ。続けるといいよ」という答えが返ってきた。なるほど、続ければ成果が出るんだと自分に言い聞かせた。考えようによれば、続けていなければ体重はもっと増えていたかもしれない。始めはできなかったスクワットのマシンも動かせている。三十分体を動かした後は、気持ちの良い汗も出て気分も軽やかになる。そうだ、体重や体脂肪などの変化はあまりなくても、筋肉がつき、気分も変わるという十分な変化があるじゃないの。週三回、三十分体を動かすだけで今までと違う変化が出てきている。そう考えるとまた頑張れる気持ちがわいてきた。
 
 もともとぽっちゃり体型の私は、スマートになりたいという願望は当然持っていた。一時期流行ったロングブレスダイエット。健康診断ではお腹をドローイン(へこませる)といいというアドバイスをいただいた。実際、どちらもやっていないが、効果が出るのかなあと興味はあった。カーブスではコーチから「腹圧を入れて」と言われている。この腹圧はまさに前述の二つのダイエット法と相通じるものがあると思う。若いときから喘息持ちであるが、カーブスに通って腹圧を入れて呼吸することで、喘息の症状も少しずつ改善してきているように感じる。ダイエットというのは、健康な体作りなのだと最近思うようになった。(あっ、ここにも成果があった。)
 
 コーチから「和枝さん、頑張っているね。見えないけれど、腹圧を入れているので、内側はシックスパックになっているからね」とほめていただき、「シックスパック、シックスパック」と割れている腹筋を想像し、気分も上がる。
 また、ちょうど一年位前から、テレビなどのメディアで「筋肉の大切さ」「タンパク質摂取の大切さ」が取り上げられるようになった。カーブスでもこれらの大切さを提唱し続けている。これまでもバランスの良い食生活を心がけてはきたが、子供たちが自立し、主人と義母との生活ではやはり野菜中心の食生活であったため、食生活も見直すきっかけとなった。
 入会時に週三回通うという目標を立てたが、義母の介護や入院、自身が目指している資格取得の勉強もあり、心が折れそうになる時もあった。ちょうどその時、カーブスマガジンで介護との両立の特集があり、「みんな上手に時間を使っている。そうだ、カーブスは気分転換だ」と気持ちを切り替えることで、より生活にメリハリがつくようになったと思う。主人の協力や応援もあって、長年目指してきた資格試験も無事合格することができた。
 
 カーブスに入会してもうすぐ一年。先日、「和枝さん、おなかの辺りがすっきりしていたんじゃない」とコーチから声を掛けられた。体重計に乗ると少し体重が減っている。思わずほくそ笑む。やっと目に見える成果が出てきたのかなと思う。千里の道も一歩からとはよく言ったものだ。
 
 カーブスは、母でも妻でもばあばでもない和枝という一人の人間が、心をリフレッシュし、健康貯筋をしていく、掛け替えのない時間を過ごせる場なのだと思う。コーチのこんな声が今日も聞こえる。
「和枝さん、今日も頑張りましたね」「はいっ」汗と笑顔が光る。