カーブスの玄関に入るとすぐに「明子さんこんにちは~」と、お元気なコーチから声を掛けていただきます。思わず背筋がピーンと伸び、カーブスモードになり「お願いします!!こんにちは!!」
 
 2021年5月、夫が亡くなり一日中家の中でボーッとしていました。膝の痛みがだんだん強くなり、屈むたびに骨の乾いたような不気味な音が響きます。外に出ると、顔を合わせる方からお悔みの言葉をいただき、涙が流れ胸が苦しくなりました。近くにスーパーがあるのですが、どなたとも顔を合わせたくないので遠くのスーパーまで車を走らせていました。家に閉じこもり、時々の買い物は遠くまで出掛けるという生活でいいのだろうか――と思っていた矢先、新聞に入っていたカーブスの折り込みチラシに目が止まりました。時々出掛けるスーパーの、マーケットシティ内にあると、記されていました。
 "予約不要""女性だけの""買い物のついでに""ひざ足腰が気になる方"等の文面に釘付けになりました。自分の都合の良い時間帯に利用できるとは、すごーい!!と思い、早速、でも恐る恐る電話をしました。こんな年寄りでもいいのかしら?運動経験は全くないけど...不安いっぱいです。ひとりひとりに合ったペースで指導してくださるので、心配ないという明るい声が受話器から流れてきて、安心して予約日を決定しました。
 予約日にカーブスを訪ねると、楽しそうに体を動かしている多くの人達と、音楽が流れていて、いい雰囲気で、不安が消えました。片足スクワットや上体起こし等の体力測定は、全くダメでしたが、いつかきっとと淡い期待を胸にして、すっかりやる気満々になり入会を決めました。若いメンバーさんに交じって、自分なりのペースでと思いながら通うことにしました。
 「カーブスの名前って、女性らしい体のカーブ(曲線)を作る所という由来なんだって」と、ぶよぶよの太鼓腹の私は、得意になって、子どもや孫たちに教えました。「へぇーすごいんだねぇ」と感嘆の声を聞くと、自分自身がほめられているような気分になりました。たんぱく質の大切さや、色々のマシンがあって有酸素運動も取り入れるボードがあり、ストレッチの大切さ等も次々と話しました。小学生の孫たちはカーブスに興味をもち、カーブスごっこで遊んでいます。一人がコーチ役で、もう一人がメンバー役になり、手を取り足を取り歩く時は支え合いで、優しい言葉掛けもして笑い合っています。毎日喜々としてカーブスに出掛ける私を、子どもたちは喜んでいます。

 夫の車椅子を押して散歩に出る時は、近くに住んでいる孫たちも土曜・日曜にやって来て車椅子を押してくれました。農道では草花を摘んで見せ合ったり、楽しい時間を過ごしました。平日は夫と2人、あちこちの小路を右に行ったり左へ折れたりと、大きな声で話し合いながら散歩しました。すれ違う人から「元気を有りがとうございます」という言葉をいただいた程です。あまりにも2人が楽しそうに見えたから、声を掛けてくださったようです。
 車椅子の目線だと全く違う景色に見えるらしく、いつも新鮮で初めて通る道のようだと夫は喜んでいました。暑い日は麦わら帽子を被り、少し風のある日はコートを着たり、首にマフラーを巻いたりと楽しみました。
 夜はベッドからトイレまで、昼間はリビングからトイレまでと、ゆっくり歩く夫の後ろから、いつでもふらついて座れるように、椅子を引いて後に続きました。入浴も介助しました。食べることが大好きな夫でしたが、だんだん食欲が落ちてき、体のあちこちが痛いと言い出しました。同時に、私も膝が痛み出しました。とうとう県立病院に入院です。
 新型コロナウイルス禍の為、面会は出来ません。持ち込んだ携帯電話を看護師さんから掛けてもらい話をしましたが、元気のない声で心が沈みました。病院食を食べなくなったので、好物の差し入れをとの連絡を受け、毎日50分程車を走らせました。少しでも食べてほしいと思い、小さな容器に、だし巻き玉子・マカロニサラダ・ふきのとうの天ぷら・きゅうりのぬか漬等を入れて、通いました。少しは食べていると聞き、安心していましたが、夫は帰らぬ人となりました。

 入会して、若いメンバーさんに交っての30分のワークアウトは、とても楽しく、だんだん顔見知りの方が増えてきました。笑顔で挨拶を交わし合えるようになってきました。
 カーブスに通いはじめて、だんだん膝の痛みが薄れてきていたのに、2022年9月に膝が、今まで以上に痛くなり整形外科を受診しました。変形性膝関節症とのことで、ヒアルロン酸注射を打ってもらい、カーブスは2週間程休みました。安静にしていると気が滅入るばかりです。カーブスが恋しくなり出向きました。コーチに、痛みに合わせてマシンにゆったり気分で向き合うようにと、教えていただき、出来る範囲でマシンを動かしていました。徐々に痛みが薄らいできました。筋肉の大切さを痛感し、ヒアルロン酸注射を、ストップしました。
 30分のワークアウトがとっても楽しく、気持ちも前向きになってきました。2023年7月、老人介護施設のボランティアに参加することにしました。若い頃、ヘルパーにあこがれてヘルパー2級の研修を受けました。数年前には認知症介助士の勉強をし、認定証もいただいています。コロナ前は、4年間デイサービス(通所介護)のボランティアの経験があります。カーブスに通って前向きになれたおかげで、週1回ですが参加しています。
 
 今では夫との散歩コースを歩いても、涙なく歩けるようになりました。空を見上げては、夫に話し掛けています。時々ズーズーと、スニーカーを引きずる音がして、思わず足を高く上げ苦笑しています。今月の小さなお約束のカードには「ボードで足踏みをする時は、膝を高く上げる」と書いています。
 「みなさーん、腹圧入っていますか~」のコーチの声がホールに響くと、首をすくめながらもグッと腹圧を入れ、笑い合っています。マシンを動かしていると「明子さん腹圧が入っていて、バッチリですね。お膝も上向いていてバッチリです。もう少し頑張ってみますか」との、ほめ言葉でやる気満々になります。継続は力なり、体が変われば心が変わる心が変われば毎日が変わる、毎日が変われば人生が変わる。まさにその通りと実感しています。30分のワークアウトの楽しさを知り、前向きになり2年11ヵ月余りです。これからも、多くのメンバーさんに交って楽しんで、若いコーチからの暖かな指導を受け、元気でいたいものです。