「ハイ、脈どうでしたか?」コーチの問いに、私は手話で答えます。「赤は、人差し指を横にして唇に当てる」「黄色は、ひよこの意味で鶏のとさかを親指と人差し指とで額で表す」「緑は、人差し指・中指・薬指の3本(指文字のミ)で頬をなでる」この3つの手話でいつも表しているのでコーチも自然に覚えてくださっています。
 
 3年前に体が重くなってきて、何かしなくてはと思っていた時、職場の近くのスーパーマーケットの中にカーブスが出来たのを発見し「えい!思い立ったが吉日」と思い見学したその日に申し込み手続きをしました。
 私は障害者がスポーツや文化活動をするための公共施設に勤務しながら、登録手話通訳者としてろう者から依頼された場所、例えば病院や、学校や、会議などいろいろな場所に行きます。手話通訳をする時間は1~2時間でそう長くはないのですが、命や生活に直結することも多いので責任の重い仕事です。頸肩腕症という職業病もあり、意識的に心身の健康を考えなければいけません。
 カーブスで運動する時間は自分だけのことに集中し、普段見逃しがちな食生活の情報が壁に掲示されてあり、運動しながら目に入るので以前はあまり気にしていなかったタンパク質や栄養バランスに気をつけるようになりました。もう一つカーブスの雰囲気がいいなと思ったことは、私の入会後手話の講師をしている聴覚障害者のAさんがやってみたいと言って体験にきた時、コーチが笑顔で「大丈夫、大丈夫」と常に笑顔で対応してくれたことです。入会の説明の時は私が通訳をしましたが、以後はAさんと生活リズムが違うのでめったにカーブスでは一緒になりません。でも手話サークルであった時には「今月の計測どうだった?」「新しいコーチが来たね」「コーチの研修で、カーブスで使う手話を教えたいね」など、いろいろな話をしています。教室は違いますが、T市内に他にも手話の仲間たちがカーブスに通っているので時々みんなで話題にして励ましあっています。

 私は全国組織の役員をしているのですが、コロナ禍で会議はすべてZOOMになり会議の休憩時間にちょっと世間話をするということがなかなかできなくなりました。それでも短い挨拶の時にカーブスの話をしてみたら、他県の役員さんもカーブスに通っていて、やはりそこにもろう者の会員さんがいることを知ってとても嬉しくなりました。障害のある人もない人も同じように充実した人生を送るためには行政の福祉施策だけで足りません。民間の、その街に生きる人々の、いろいろな人の理解と協力が必要です。福祉施策やボランティアという関係だけではなく、自分たちの生活のなかにある趣味や健康づくりや遊びなど、友人として一緒に楽しむ気持ちを持つ人が増えてほしいと思います。
 全国の手話仲間たちがカーブスに通い、そこでは「こんにちは」「お疲れ様」「脈は?」「赤」「黄色」「緑」「次はいつ?」などの簡単な単語をコーチと手話でやりとりしているでしょう。そんな教室がもっともっと増えることを願っています。