「バージンロード」を歩くことになった。
「ご安心あれ!私の結婚式ではない!娘の結婚式だ!」夫、すなわち、娘の父親が、既にこの世にいないからだ。
「イヤダッ!バージンロードを歩くなんて!」とさすがの私も『即答』した。
「アッキー(私の息子)じゃ、駄目なの?シンゴクン(私の弟)でもいいんじゃないの?」私の意見は突っぱねられる。
「『お母さん』が歩くのって結構ありますよ!」婿殿の母上に言われてしまっては、「イヤダッ!」とは言ってもいられなくなった。
(ああ、でもどうしよう?『コロナのマスク』で油断していたら、皺やシミがいっぱいになっちゃった......!)
「こんな顔」では、人前を歩けない。ここで私は考えた。「私には、強い見方がある!」その名は「カーブス」だ。(『バージンロード』まで、まだ半年ある!)半年で「内側」から、肉体改造するのだ。カーブスに通い、筋トレに励み、プロテインを飲む。(でも、肉体改造には『半年』は短いなあ......)
 そうだ!私には、もう一つの味方、「エステ」があった!身体の内側からは「カーブス」で、「速攻」で外側を磨くのは「エステ」だ。
とは言え、「花嫁さん」でもないのに、「ブライダルエステ」までは、やり過ぎだろう。月に一度の通常の「エステ」に加えて「おうちエステ」に励むことにする。エステの先生も協力してくれて、「結婚式」までの「エステ計画」を立ててくださった。(さあ、あとは実行あるのみ!)いつもの「倍」は気合が入った。

 効果は、かなり現れた。体重が、「理想体重」に近づく。「体脂肪率」が下がる。「カーブス」は効果が目に見える。が、「エステ」の方は、「速攻で!」とは言え、すぐには、効果は表れない。顔の「皺」や「シミ」を取るのは、そう簡単なことではない。が、ここにも「味方」はいる。プロによる「化粧」だ。「留袖」をレンタルし、「着付け」もお願いするので、「この際『ヘアメイク』もプロに任せよう!」ということになった。
私は「着付け教室」に通ったから「訪問着」は自分で着られるし、着物用ヘアーも、なんとか自分で作れる。でも、半年間の『カーブス』と『エステ』の成果を『開花』させるには、「プロの力」がいる。「なんでも自分で!」に拘ることはない!人間は一人じゃない!周りのみんなに助けられて、生きていくのだ!「カーブス」は、それを私に教えてくれた。

 さて、結婚式当日。「留袖」を着付けてもらい、ヘアメイクも終えた。
「『お嫁さん』が、出来上がりましたので、そちらに行きましょう!」
「花嫁さん」控室に、連れて行かれる。「花嫁」と「母」の「御対面」である。
「うわぁ!綺麗!」「お母さんも、綺麗!」娘と私はお互いを褒め合った。
「さあ、『バージンロード』だ!」係の人に「立ち位置」から始まり、「ベールの挙げ方」、「バージンロードの歩き方」、更に「婿殿へのバトンタッチの仕方」などを、事細かに教えられる。(キャッ!難しい!)最後の最後でしくじっては「半年の努力」の甲斐がない。(落ち着け!)と、自分を励ます。「カーブス」のみんなが、「エステ」の先生が、応援してくれている。
「お母様!どうか堂々とお歩きになってください!私からの最後のメッセージです!」それを機に、「係の人」は「舞台」を降りていった。
(堂々と、歩く?『母親』が......?)私は、気付いてしまったのだ。私が「係の人」にいろいろと教えてもらったことは、やっぱり、「バージンロードを歩く『お父さん』」のためのものだったのだ。(『マニュアル』に『お母さんバージョン』なんてないんだ!)が、もう既に「まな板の上に乗ってしまった鯉」である。(ええいっ!『お父さん』のように、堂々と歩こう!)私は、堂々と歩き「祭壇」の前で待つ「婿殿」に「娘」を無事渡した。その時、「よくやった!」と、天から「夫」の声が降ってきた。