現役の間は仕事と育児と家事で時間が過ぎてしまった。退職を前に三つ誓いを立てた。
一つは、家を隅々まで磨きあげること。
これは一週間で私には無理だとあきらめた。
もう一つは、何かボランティアをして、人の役に立つこと。これはなんとか続いている。
問題は最後の「何か運動を継続する。」だ。
まず、地下鉄名谷駅前の「健康館」に通うことにした。温水プールで水中ウォークや希望すれば水泳指導も受けられ、お風呂も併設されていて快適だったが、冷風の吹きつける洗体槽を通らなければならないのと、水着の後始末が大変なのとで半年ほどでやめた。
程なく市立総合運動公園のグリーンアリーナ1階のトレーニングジムに通いはじめた。
無料でたくさんのマシーンを使えるのが魅力だったが、男女共用でマッチョマンが多く威圧を感じた。彼らがマシーンの目盛りを高くしたまま放置するので、1台1台目盛りを下げるのが腹立たしく面倒なので、やめた。
無料つながりで西体育館の体操教室にも通ってみた。小さいトランポリンやボールが貸与され、体育大学生のアルバイトらしい若い女性が指導してくださったが、30人以上の一斉指導は小中学校の体育の授業のようで気乗りせず、一期中はがんばったが、二期目申し込む気にはなれなかった。
明石勤労会館のピラティスも受講した。
講師の指示でボールも買い込んでがんばったが、体のどこに効いているのか分からなくてやめてしまった。
自治会館で近所の若い女性がヨガ教室を開かれると掲示板に出ていたので入級することにした。板の間にバスタオルを敷いてドタンバタンいろんなポーズを決めて頑張っていたが、しばらくすると講師のお友達が数人まとまって入級され、若さに圧されて「お呼びじゃないな。」と身を引いた。
年配の女性が郊外で教室を持っておられると知って弟子入り。車で送迎させていただいたので喜んでくださって、ヨガマットをプレゼントされたが、1
時間レッスンを受けると息が切れて汗だく、とてもヘビーでついていけなかった。丁重にお詫びを言ってやめた。「帯に短しタスキに長し......まぁいいか、しばらく様子を見よう。」とボランティアに精出していた頃、西陣南駅から地下鉄に乗ろうとセリオ商店街を歩いていて、しばらく閉まっていた店舗で工事が始まっているのに気付いた。「何ができるんですか?」「女の人だけのスポーツジムになるらしいです。」
カーブスとの出会いである。店舗数は今よりずっと少なく、カーブスという名は知らなかった。セリオ西陣南店はその後2011年11月8日にオープンしたようだが、私の入会はその約3か月後の2012年2月14日である。心は動いていたが「うかうか始めてやっぱり辞める」というさすらいの旅を繰り返したくなかったし、公営でなく会費が高額なため慎重にならざるを得なかったのである。
以後今日まで9年余りなんとか続けてきた。「わたしって意志が弱い?」と思いながらさすらってきたが、「相性が合えば続くんだ。8年さすらっても10年続けば充分では?」と自信をつけているこの頃である。
なぜカーブスだけ続いたのか考えてみた。
まず女性専用なので体力的に差がなく、気分的にもリラックスできる。コーチが助言はしてくれるが、何かを強制されることがない。
服装も自由で、季節によると着替えも不要。
汗だくで息が上がるということがなく、運動量が適度である。マシン毎に体のどの部位に効いているか実感できる。時間の割り振りなどもなく自分の生活リズムに合わせて自由に利用できる。駅前商店街の中にあるので買物ついでに気軽に寄れて、混んでいても時間をつぶしやすい。プロテイン飲用や栄養指導など総合的に健康意識を高めてくれる。
「よいことずくめ」のようだが、実は最初の2~3年は体調不良に苦しんでいた。消化器が不調で、胃カメラ大腸カメラCTにMRIと検査の日々、心療内科でデパス・マイスリー・ワイパックスなど薬を常用、折角始めたカーブスなのに「お休みが続いてますが、お加減いかがですか?」と電話がかかることもあった。「顔色悪いね。」「ええ、どうも調子が悪くて...。」そんな会話が挨拶代りになった。
けれども体調と相談しながらがんばってカーブスに通ううちに少しずつ気分が上向きになり、この数年は嘘のように安定してきた。
久しぶりに会った友人に「えらい元気そうやね。一時はどうなることかと思ったけど、よかったね。」と言ってもらえるようになった。カーブスのお蔭だ。最近入会した後輩さんから「私より若々しいですね。」とお誉めの言葉をいただいている。が、油断は禁物。運転事故と転倒に気をつけて毎日を生き生きと過ごしていきたい。
入賞
「さすらいの果てに手に入れた健康」
カーブスって
どんな運動?
2021年の他の作品を読む