「お母さんおはよう!」「はい!おはよう!」元気な声に自然と頬が緩む。今朝も歩いて3分の実家に寄り、母と連れだって出かける。ゆっくり歩いてカーブスまで15分。その間、家族のこと、世の中を騒がせているニュースの話題など、話すネタは尽きない。
 それでも私は周りに注意してアンテナを張り巡らしている。何たって母は82歳。どうしても歩く速度は以前より遅くなってるし、車や自転車が近づいてきてもパッとは動けない。話に夢中になると、だんだん道の真ん中を歩いているし(笑)。「はいはい、もっと端っこに寄って」。上手く誘導しながら。横断歩道の信号も母の足の速度で間に合う方へ行く。たった15分でも、通り慣れた道こそ注意しなきゃ。
 カーブスまで、ちょっとしたウォーキング。季節毎にいろんな花が家々に咲いているのを眺め、昔からの家が建て壊しになり、更地となる。そして新しい建物が、あっという間に建つ町の変遷。子どもの頃から住み続け50年。昔と変わった町並み、そして変わらない物に愛着が湧く我が町。
 
 今でこそ元気な母だが、幼い頃から身体が弱く、小学4年の時は1年間休学して療養生活を送ったほど。耳も難聴でずいぶん苦労したらしい。何より、もういちど4年生をやり直したことは悔しかったとのこと。必死で勉強に励み、高校はトップの進学校に進んだ。
 しかし、体力は無かったらしく、大学に進学したくとも健康上の理由で父親に反対され、就職。すぐに結婚し私が生まれた。私も身体が弱く、すぐ熱を出す子だったので、自然と家の中で過ごすことが多く、運動は苦手だ。
 だから、体育は嫌だった。かけっこはいつもビリだったし、球技も鉄棒も飛び箱も苦手。
 そんな私を励ましたかったのだろうか、小学5年生の冬の早朝、母が私と2人で近所をマラソン練習するようになった。寒いし、眠たいし、嫌々だったが、その頃の母の命令は絶対だったから逆らえない。1ヶ月くらいは続けたと思う。その後にあった校内マラソン大会。息は苦しかったけれど、運動オンチの私が女子部門学年7位に!
 それから中学卒業まで、マラソン大会だけはずっと上位入賞できたのは、あの母の特訓のおかげだ。今思えば、主婦とはいえ、朝の忙しい時間をさいて、一緒に走ってくれた母には感謝しかない。

 私も学校生活、就職、結婚子育てと、目が回るような忙しい生活をずっと続けてきて、近くに住んでいても、母と今のようにゆっくり歩くことは無かった。実家でピアノ教室を営んでいるので、毎日のように通っても、ゆっくり話す時間は意外と無かった。孫の面倒もかけっぱなし。晩ご飯までご馳走になって帰るほど。結婚後もまるでパラサイト(寄生)のようだと、よく近所の友人に笑われた。
 2人の息子も就職し、ホッとした頃、母に誘われ通い始めたカーブス。母が半年先輩!運動オンチの親子だが、カーブスの筋トレは短時間で終わるし、コーチの声かけでスムーズに動ける。そして明るいコーチの励ましの声かけが運動苦手意識を忘れさせてくれる。
 ヒザが痛み、歩くのがきつかった母は、最初の5年ほどは週に2、3回カーブス通い。その合間に整形外科通いもしていた。私が平日の午前中は毎日通うのを見て、「私も!」と一緒に通いだしたら、いつの間にかヒザの痛みが取れ、整形外科通いを辞めた。筋肉が付いた証拠かな?と喜んでいる。
 
 そのうち、私が用事で行けない時も1人カーブスに通い、先日とうとう千回達成記念のTシャツまで貰うほど。その変化を本人も喜んでいるが、高齢者になっても明るく元気な母の姿を見られる娘の私の方が喜びが大きいかもしれない。あの病弱だった母が、こんなに元気で長生きしてくれるなんて。
 そして何より、これまで支え続けてきてくれた母と一緒に通う事で、今まで出来なかったゆったりとした時間を共に過ごし、話すことが出来る幸せを噛み締めている。
 また、コーチが名前で呼びかけてくれるおかげで、メンバー同士も自然とお互い名前で呼び合うほど仲が良い。ちょっと休みで顔が見えないと、「どうしたんだろうね、○○さん!」と話すほど。
 先日も、カーブスが始まる前の待ち時間に、エスカレーターでご高齢のメンバーの2人が倒れてしまい、動けなくなった。救急車を呼び、車で病院まで付き添ったのが顔馴染みのメンバーさんたちとコーチ。おかげで大事に至らずひと安心。こんなにチームワークの良いコーチとメンバーさんたちがいるお店は他にないのでは?と自信持って言える。
 
 コロナ期間も、ずっとマスク着けながら筋トレとお喋りに励み、絆を深めてきた私達。年齢は様々だけど、仲良くお喋りできる雰囲気作りを、店長はじめ、明るく元気なコーチの皆さんが醸し出してくれたおかげだと感謝するばかり。
 特に店長は妊娠中も大きなお腹を抱えながら弾けるような笑い声でみんなをサポートしてくれた。みんなも自分の孫、ひ孫のような赤ちゃんの誕生を心待ちにし、玉のような可愛らしい女の子が生まれた報告に心から祝福した。彼女が成長した世界は、筋トレが当たり前となり、元気な女性があふれるようにと願うばかりだ。
 
 運動苦手な親子が、こんなに楽しく毎日元気で筋トレに通えるカーブス。今まで多忙だった母娘に、ご褒美のような、ゆったりとした至福の時間をプレゼントしてくれた。いつまでも、この時を一緒に過ごせますようにと、祈るような気持ちでいっぱいです!