私のすきな言葉、それは「今日が一番若い日」です。たしか何十年も前に女性評論家の方が言っていた言葉だと記憶しています。その時は正真正銘まだ若かったのであまりピンとこなかったように思います。年を重ねてこの言葉を思い出したときに、本当にそうだなあ、明日になれば一日分年をとるのだからと心から同感しました。
 
 八年前縁あって六十九才でカーブスに入会したときにはこの「今日が一番若い日」の言葉がグイグイと背中を押してくれました。それ以前は往復二時間電車に乗って夫の仕事を手伝っていましたが六十五才で定年にしてもらいました。
 
 それからは大好きな編物、縫い物、読書とすわったままでしかできないことをあきるほどやっていました。
 
 運動不足のかたまりのような生活であったと思います。
 
 そして六十九才になった時にいよいよ来年からは七十代に突入だという現実に心が焦るような感じをおぼえました。

 「老い近し とみに感ずる今日なれば 急ぎ学ばん 何故に学ばん」

 その頃のノートに書きつけてあった短歌のようなものです。かなり焦っていたようです。運動は生来苦手でしたがこのままではいけないと思いはじめた時に、駅前でカーブスのパンフレットをもらいました。
 
 どんなことするのかな......どんな人が来ているのかな......と不安もありましたが迷っているひまはないととりあえず電話をして入会説明の予約をとりました。とにかく背中を押されているのですから。年をとると新しい環境に足をふみ入れることに勇気がでなかったりしてしまいますが、文字通りの「案ずるより産むが易し」でした。
 
 予約当日教室に行ってみたら息子たちの幼稚園、小学生時代のいわゆるママ友の顔が何人かみえました。その中の一人が紹介者になってくれて即入会しました。誰にでもできる簡単な体操で通ううちにいつの間にか八年も経っていました。私より年上とみられる方もいらしていてかわいらしく体を動かしているのをみるとまだまだ私も大分続けられるなと元気がでます。折角体操に通っているのだからよい結果をみたいと食事にも気をつけるようになりました。日中はひとりなので昼食など簡単にすませていましたが、たん白質を意識してきちんと食べるようになりました。もちろんプロテインも欠かせません。体重も八キロ落ち毎日の生活動作がとても楽になりました。
 
 ここ三年はコロナ禍にありマスクをしての体操でしたが顔みしりが沢山できていたので手を振って笑いあったり外で会えば「今日はカーブス行ったの?」が挨拶がわりです。それはささやかな楽しみです。
 
 カーブスに通い続けているのを一番喜んでくれるのはもちろん家族です。夫はもちろんですが、二人の息子やお嫁ちゃんたちもたまに会うと「カーブス行ってる?」と聞いてくれます。

 「もちろん続けて行ってるわよ。やめ方がわからなくなっちゃった」
 と冗談を言うと
 「お母さんえらい!!続くねー」

 とほめてくれます。朝の家事をすませるとすぐに水とシューズの入ったリュックを玄関に置いておくのが私のルーティンです。
 
 先日コーチに「この教室の最高齢の方は何才ですか?」とお聞きしたら「八十九才ですよ、がんばっていらっしゃいますよね」とのこと。「今日が一番若い日」どころではありません。私もあと十年以上、続けられるようにあやかりたい。
 
 もちろん私のすきなおまじないのあの言葉を胸に......。