ある日母が帰ってきて開口一番こう言った。
 「表彰されたの!カーブスで」
 私は驚いて
 「ほんとに!?すごいね」
 と答えた。

 カーブスプリンセスというチャレンジ企画で、腹囲のサイズダウンの結果を出したのだそうだ。
 「初めて!苦手な運動で表彰されたの」
 そう、母は運動が苦手なのだ。カーブスに通い始める歳まで運動らしい運動をしてこなかった。むしろ避けてきた。彼女は歌のためにカーブスを始めた。
 
 彼女は感音性難聴だ。それはストレス性のもので比較的若くして彼女は難聴になった。子育てや夫との家庭内のストレスであったこととだけ触れることにして詳しくは省く。
 子供が手を離れたころ、彼女は残された聴力と時間を自分のために使いたいと歌を始めたのだ。歌は全身を使う。特に腹筋が必要になる。自分の望む高い美しい声を出すためには筋肉が必要だ。
 
 カーブスを始めた母は、はっきりと明るくなった。転ばなくなった。転びかけても手をついて怪我をしなくなった。
 「カーブス!」
 転んで立ち上がるとき母は得意げに言ったりした。私は母が本来持っていた明るさを取り戻してとても嬉しい。もう通い続けて5年になる。
 私は一時期カーブスに通ったのだがコロナ禍でやめることになり、その後テレワークになって太ってしまった。そんな私に母はカーブスのストレッチのリーフレットを持ってきてくれた。再開しよう、私は決意した。