朝、9時20分。「カーブスに行ってきます!」「行ってらっしゃーい」
私の毎日は「カーブス」から始まる。
私は幼いころから運動が苦手でした。母の言うことには、父が長女の私を大切に思うあまり、少しでも危ないことをしようとすると、いつも制止していたから、飛んだり跳ねたりすることや、鉄棒をしたり、ボール遊びが出来なくなったらしい。お蔭でドッジボールも逃げてばかりで他の子の様にボールをガシッと受けるなんて怖くて出来ませんでした。運動をしないから、室内で本を読んだり手遊びばかりしていました。運動は出来ないが勉強は出来るといわれるようにがんばったので、おかげで国語、算数は得意でした。
しかし、五年生になった時、担任の先生が運動好きで、私たちをいつも運動場へ連れ出しては、跳び箱、鉄棒、逆立ちなど熱心に練習させてくれました。それまではちっとも出来なかった私も、跳び箱も跳べるようになり、逆立ちも出来るようになりました。黒板に向かってスカート姿の女の子もみんな逆立ちしていたのを今でもよく覚えています。子ども心にやはり練習すれば出来るんだなあとその時わかったのです。六年生になり担任が変わったら又、跳び箱も出来なくなりました。練習がいかに大切かをものがたっているのです。
中学時代は、体育の授業は適当にやっていました。クラブ活動はバレーボール部に入りましたが、練習がきつくて家に帰ると疲れて眠くなり、何も出来なくて中途退部しました。体力がないためでしょうが、バレーボールが好きになれなかったからだと思います。本を読んだり問題を解いたりする方が楽しかったのは事実です。根性がないやつだと言われそうだが仕方ありません。
高校生になっても体育の時間はダンスの時は楽しかったのですが、球技は全く下手で苦痛でした。一方男子はスポーツが出来る子の方がかっこいいと思っていたから勝手なものです。大人になり、将来結婚するならスポーツが得意な人の方がいいなとなんとなく思っていました。子どもが私に似て運動が下手だとかわいそうだし、父親がスポーツが得意なら、子どもも上手になるだろうと単純に思ったからでした。
職場結婚をした相手は、運動が得意な人でした。生まれた子どもは男の子ばかりで一応スポーツは人並みに出来たので安心しました。夫は精神的にも体力的にもきついといわれる仕事に従事していたので、土曜、日曜日は上司から勧められてゴルフを始め、私の知らない間に上手くなっていました。時には優勝してもらったという女性用の下着などをお土産にくれました。その後もゴルフクラブを次々買い換えて退職してからもいろんな仲間とゴルフに余念がありません。体を壊し週3日人工透析していても、行ける日はプレイングゴルフです。
最近家の近くに、女性だけの30分の筋トレをする「カーブス」というジムが出来たので通い始めました。私は年齢も高くなり、足腰が弱っていくばかりだから少し危機感もあったので、無料体験をさせてくれるというのでやってみました。今では週に4、5回参加しています。すっかりはまってしまいました。その理由はまず、あまりきつい運動でないことと特別な技能が必要ではないこと。音楽に合わせて12種類の筋トレのマシンを30秒位ずつ使って次々とやっていき2周すれば、後は決められたストレッチをやって終わるのです。1回1回はきつくないが毎日のように続けると体重も少しずつ減り、体脂肪が少なくなり筋量が増えてきました。家から歩いて七、八分の近い所にあり、30分という短時間の運動の運動であるのがとってもやりやすく、月曜日から土曜日迄、毎日続けてもあまり負担になりません。参加している人は60代や、70代の私と同年代の女性ばかりなので共通の話題が多いのです。「私、おなかの周りが減ったのよ。」「えっ、すごーい。私も体重減って筋力ついたよ」「油の少ない肉料理、どうやってつくろうかな?」「ささみと大葉がいいよ」など話はつきません。
その上、若々しい女性のコーチの人たちは、ジムに到着すると一人ひとりを苗字でなく、下の名前で元気いっぱいに声かけをして迎えてくれます。ジムの中にいる時はメンバー一人ひとりに絶えず、明るくやさしく、やる気を出すよう励まし続けてくれます。1カ月ごとに体力などの計測をして結果が出るので自分の現状がよくわかり目標が出来るのです。又、私の通うジムでは、100回達成すると100と書いたTシャツをプレゼントしてくれます。もらえるものには目が無い高齢者にとって鼻の先のニンジンのごとく、みんなせっせと通っています。中には900と書いたTシャツを誇らしげ気に着ている女性もいます。彼女は実に努力家でほぼ皆勤です。体もひきしまり、見たところの年齢よりとても若々しいです。私は今日、コーチから「おめでとうございます」と言われ、300回のピンクのTシャツをプレゼントされました。嬉しくて、さっそく家族に見せびらかしました。次は400回を目指して頑張ろうと決意を新たにしました。ジムを出る時必ず、コーチが「次はいつ来られますか?」と尋ねてくれるので迷っていても「明日来ます。」と答えてしまいます。
こういう理由で私は70歳を過ぎても、ほぼ毎日「カーブス」に通い、将来寝たきりにならないように、出来るだけ自分のことは自分で出来るような筋力をつけたいと励んでいます。お蔭で下手だけれど、先日ゴルフのコンペに参加して、準優勝できました。友達がそれは「カーブス効果だよ」と言ったのには、笑ってしまいました。でも、内心、「カーブス、ありがとう」とつぶやきました。ゴルフは難しいですが、楽しいし、もう少し上手になりたいので、「カーブス」に通って筋力や体力をつけ、これからもチャレンジしようと思っています。無理しないで自分流にスポーツを楽しめ、健康長寿と言われるような体力をつけることができたらこれ以上幸せなことはありません。今は「カーブス」にめぐり合えたことをすごく感謝しています。
佳作
「『カーブス』と私」
カーブスって
どんな運動?