20年ほど前、3人の子育てに毎日バタバタしていた頃、視力が落ちたような気がして、眼科を受診しました。そこで、思いもかけない病気を診断されました。難病の網膜の病気で、今の医学では治療できない。進行性の病気で、いずれは失明します。と言われたのです。それでも視力も視野もかなりあり、夜盲は少しありましたが、生活にさほど支障はなく、過ごしていました。しかし、5年経ち10年経ち病気はゆるやかに進行して行きました。10年前、歩行訓練を受けましたが、白杖をついて歩くことにどうしても抵抗があり、ガイドさんや家族と外出することが増えていき、そのうち外に出ることも少なくなっていきました。少しずつ出来ないこと、諦めないといけないことが、増えていきました。周りの人はできなくなったことを考えても仕方がない。まだできることがたくさんあるからそれを考えたらいいじゃないと励ましてくれました。でも、できなくなっていくことはやはり、悲しく辛いものでどんどん自信を失っていくようでした。
このままではいけない、何とかしなくてはと思うようになり、自分の苦手なこと、嫌いなことに挑戦してみよう。それができるようになったら、少し自信を取り戻すことができるのではないかと思い、考えた末、私が選んだのは走ることでした。視覚障害者のランニングチームがあり以前から誘われていたのですが、とにかく子供の頃から持久力がなく、走ることだけは避けてきました。走ろうと決めたものの、いざ参加するまで、それから数年かかりました。勇気を出して参加した時、数百メートルをゆっくり走っただけでハアハアでした。それから少しずつ練習をしていき、少し走ることが楽しくなってきた頃、足に痛みが出てきました。やはり、長年の運動不足と視覚障害者ならではの足腰の弱さがあり、歩くことが怖いので、どうしてもゆっくりになるし、足もすり足気味で過ごしているので、走ることは、ハードなことでした。痛みがどんどんひどくなり病院に行ったところ、筋肉がなく、足を引き上げる細胞も極端に小さいから、このまま続けることはできない。続けたいならリハビリに通いなさいと言われました。しばらくその整形外科に通いマッサージに軽い運動、電気を当てたり冷やしたりと治療をしました。痛みは少し取れたもののこのまま、この治療でいいのかと疑問を持ち始めたと同時に、もう走らなければそのうち良くなるのかなとか、せっかく始めたけど諦めようかと思うようになってきました。そして、だんだん病院にも足が遠ざかるようになっていきました。
これからどうしようと思っていた時、カーブスに行き始めた友達が「カーブスは筋トレをする所で女性だけだから行きやすいよ」と教えてくれたのです。視覚障害者なので、スポーツジムみたいなところに行きたいと思っても無理だろうな。迷惑もかけるだろうし、と思って諦めていました。
そして、その頃はもう一人では外出できなくなっていましたので、通うこともできない。やはり無理だ。でも、また走りたいと思う気持ちがなくならなくて、勇気を出して、カーブスに電話したのです。「目が不自由ですが、受け入れてもらえますか?」と言ったところ「一度体験に来られませんか?できる限りサポートさせて頂きます。」と言って下さいました。「では、また行ける日を連絡します。」と言って電話を切りました。そこからが、また、私の戦いでした。通うなら自分で行かないと意味がないと思ったのです。でも白杖で歩けない。臆病な自分が諦めようと言います。そして、悩んでいたらカーブスから電話がかかってきたのです。「楽しみに待っているので、是非お越しください。」その電話がとても嬉しくて、後押しをされて、決心しました。カーブスに行けるように練習をしよう!ガイドさんにお願いして、家からカーブスまでの道を何度も何度も歩いて練習しました。何年も一人で乗っていなかったバスにも挑戦です。一番安全で行きやすい道を色々試して、三か月ほどかけて、やっと少し行けそうな気がして、ついに体験にこぎつけました。
コーチは私の不安な気持ちやどうしたいかを丁寧に聞いてくださり、「私達も経験はないですが一緒に頑張りましょう。全力でサポートさせて頂きます。そして、ここのメンバーさんはとても優しいから大丈夫ですよ」と私の不安を受け止めてくれ、頑張ってみたいと入会を決心しました。
そして、初めての日。なんとか一人でたどり着いた私はカーブスのドアを開けた瞬間、涙が溢れ、迎えてくれたコーチにすがりついて泣いてしまいました。その時の感動は今でも忘れられません。私の目の見え方は、まず、顔は分かりません。なんとなく人がいるシルエットが少し分かりますが、視野がサランラップの芯を除いているくらい狭いので、物のほんの一部がボヤっと分かるくらいです。なので、マシンの形が分かりません。ひとつひとつ説明してもらいながら、頭にたたきこみます。これは思った以上に困難なことでした。緊張と怖さで体も硬くなり、家に帰るとふらふらでした。行き帰りの歩行も恐怖との戦いでした。でも、いつも明るく元気に迎えてくれるコーチに元気をもらい、くじけそうになりそうでしたが、頑張りました。カセットテープにマシンの説明を録音して、家で何度も聞いて、イメージトレーニングです。いつまでもずっと付き添ってもらうのは申し訳ない。迷惑をかけているのではないか。そんな気持ちもありました。そして、周りの状況が分からない私をメンバーの皆さんはどう思っているのだろうかとか、馴染めるか不安な気持ちもありました。でも、あるメンバーさんが話しかけてくれたことをきっかけに皆さんがどんどん声をかけてくれて、話をすることができるようになりました。
今では、皆さんが、さりげなくマシンの移動を手伝ってくださったり、給水も渡してくれます。名前を呼んで、手を握って、肩を叩いて、声をかけてくれることはとても嬉しくて、今日も頑張ってきてよかったと嬉しくなります。通い続けることができているおかげで、少しずつ体力と筋肉もつき、また走りだすことができました。走って、痛みが出ても、早く快復するようになり、走れる距離も伸びてきて目標にしていた大会にも参加することができました。また走れるようになりたい。という入会の目標は見事達成できました。
そして、それ以上に嬉しいのは、外に出て行くことが怖く引きこもりがちだった生活が一変したことです。コーチとメンバーさんの温かい励ましと、皆さんの頑張りが私に元気をくれて、色々なことにチャレンジしようという気持ちを引き出してくれました。自分が助けてもらうことは周りの人に迷惑をかけるのではないかという心の壁が取り払われて、素直に手助けをしてもらって、社会に溶け込んでいけばいいのではないかと気持ちも変わっていきました。
最後に通い始めて数カ月たった頃、コーチが「私はメンバーさんのことが大好きです。でも、ゆみさんが来てくれるようになって皆さんの優しさや素敵なところをたくさん知ることができて、ますます大好きになりました。ゆみさんありがとうございます」と言ってくれました。嬉しくて涙が出そうでした。私の方こそ、ありがとうをいくら言っても足りないくらいです。その言葉は忘れられません。生活している中でさまざまな困難があります。それぞれに抱えている問題は違うと思いますが、健康であれば乗り越えていこうと思う気持ちがわいてきます。でも、気持ちが元気でも体が不調だと力も湧きません。その心と体を元気にしてくれるところがカーブスだと思います。私の目の状態は少しずつ悪くなっていていつまで通うことができるか不安はありますが、出来ることを精一杯頑張って、手を借りながら続けていきたいと思います。
グランプリ
「優しい仲間に支えられて」
カーブスって
どんな運動?