子どものころから、体育が苦手だった。
 小学2年生の時、放課後、一人で逆上がりの練習をずっとしていたが、結局できなかった。一度「できた!」と思った瞬間があったのだが、本当に一度きりで、今になって思えば単なる勘違いだったのだろう。大人になって、夫とともに公園で再び猛練習したが、やはりできなかった。
 
 マラソンの時は、とにかくびりにならないことだけを目標にして、歩いたり止まったりせず、まじめに黙々と走った。高校の時、川を挟んで周回するコースでは、仲良しの友達が先頭を切って走り、対岸で手をふって応援してくれたが、終了時間ぎりぎりでゴールするのがやっとだった。
 
 走り高跳びで、先生に「この高さまで跳べるようになるまで何度でも跳べ!」と言われて跳んで、1回目で転倒して手首の骨にひびが入った。先生も困られたことだろう。
 
 こんな私を心配して、夏休みになると母は近くのスイミング教室に通わせてくれたが、ひとつ級をあげるのに1年以上かかった。中学生になって、ようやく背泳ぎのレベルまで行ったとき、周りは小さな小学生ばかりだった。
 
 大学生になってスキーにも行ったが、スキースクール4日間集中2回受講してようやく自力でゆるゆる滑れるようになった。
 
 もちろん球技など論外。ドッジボールでも、バレーボールでも、バスケットボールでも、ボールが来ればチームのためには逃げるしかない。それでも、卓球位ならと思っていたのだが、女子16人クラスで5人ずつ3チーム作って卓球の試合をするときに、補欠にされたのはショックだった。
 
 こんな調子で、もちろん体育の成績はずっと5段階の「2」。まじめさだけが評価された。
 
 そんな私も、定年退職になり。時間に余裕ができたので心機一転、体を鍛えなおすことにした。チームプレーは無理なので、スポーツジムに入会して筋肉トレーニングとエアロビクス、ヨガなどを始めた。

 ところが、ヨガでは、まず胡坐がかけないことに気づいた。子どものころはしていたはずだったが、すっかり体がかたくなっていた。初級コースでもコーチが見せてくれるポーズがほとんどとれない。エアロビクスでは、足と手をどう動かせばいいのかさっぱりわからず、ついていけない。バランスボールでは何度も転げ落ちる。しまいには、さすがのコーチも私の動きを見て笑いをこらえているのが分かった。

 筋肉トレーニングでさえ、ほかの人を見ていると情けなくなるほど、私の動きは弱い。唯一、自信あったスイミングも、クロールを25m泳ぐと息が上がり、しんどくて続けられなかった。周りの私の同年代以上の女性たちが1km、2kmと続けて泳いでいるのを見て、驚愕した。子どもの頃の劣等感がよみがえってきた。
 
 そんな私が、友人に勧められてカーブスを体験した。最初の印象は「たったこれだけ?」「こんなので効果あるの?」だった。若いころの不摂生がたたって、しっかり肥満体になり、高脂血症で薬も飲んでいる。体はさらにかたくなり、腰やひざなどの痛みもある。よろけたり転んだりもしょっちゅうである。体年齢は実年齢を10歳以上こえていた。

 3年続けていたスポーツジムやヨガでは、全く改善しなかったのだ。それがカーブスのたった30分のこんな軽い運動でどうかなるわけがない、というのが私の本音だった。でも、たった30分で、職場や家からも近いというのは、パートタイムで働いている今の私には続けやすい条件だった。なにはともあれ、入会することにした。
 
 はじめは、うまく姿勢が取れなくて、よくコーチに指導された。毎月の計測でも、正直、そんなに変化はなかった。ただ、体脂肪率や体重が多少減ることがあるくらいだった。それでも、続けて悪いことは何もない。何もしないよりはましだ。そう思って、黙々と続けた。
 
 1年ほど過ぎた。コーチに「姿勢がいいですね」とほめられることが増えた。体年齢が下がることがあった。びっくりしてうれしくなった。通うのが楽しくなった。ところが、その頃急に仕事がふえて、あまりカーブスに通えなくなることが半年続いた。すると、2ヶ月連続して体年齢が上がった。変形性膝関節症になって、正座ができなくなった。階段の昇り降りがとても苦痛になった。カーブスを続けることで、現状維持できていたことを思い知ることになったのだ。
 
 4月からは仕事を減らして、またカーブスにちゃんと通い続けようと思っている。入会時の体調に戻れるかどうかはわからないが、少しずつ改善されていくだろう。子どものころ、とにかくまじめに体育の授業を受けていた。でも、あの頃の先生は、ただ「やれ」というばかりだった気がする。

 でも、カーブスにはコーチがいる。正しい運動方法を継続して教えてくれて、ちょっとでもいいことがあるとほめてくれる。60歳台も後半、人生の半分以上を過ぎて。ようやく楽しい運動に出会えた。まじめに続けることで成果が出てくる。カーブスは、私の楽しい体育の時間になった。ありがとう。これからもずっとよろしくお願いします。