カーブスに行くのは気が重かった。5年前に8ヶ月ほど在籍していたが仕事や家事の忙しさのせいにして続けることができず、自称「カーブス中退」という不名誉な称号の持ち主の私であったからだ。そして、車で店舗の前を通る時は気になりながらも5年が過ぎた。
60歳の定年退職と同時に、週3日の勤務を続けることになったが、余暇は週4日に増えた。自由に使える自分の時間もありそうだ。3月の退職から4ヶ月ほど経った時だった。4歳年上の元気な先輩から「カーブスの体験に行かない?」と誘われた。「私、カーブス中退だよ。続けられるかなぁ」と消極的な私。でも先輩は、「AさんもYさんも行って、健康になったらしいから行こうよ。」と行く気満々。体験だけならと予約を取り、先輩と一緒に体験に行くことになった。実に5年ぶりのことだ。カーブス石垣登野城店は店舗を引っ越し、場所こそ変わったが、器具や内装は5年前とほぼ同じだった。そして驚いたことに5年前に顔見知りになったメンバーさんが、大勢継続しがんばっていた。そして、皆、輝いていた。
私の頭をよぎったのは「私も5年続けていたら皆と同じように輝いていたのかなぁ。あー続けていればよかったなぁー」と、5年前の自分の意思の弱さに後悔するばかりだった。最低5年は続けよう!と心に言い聞かせた。即座の気持ちの切り替えは早かった。お供のつもりでついて来た私は、体験をする頃は先輩より積極的になっていた。12のマシンは不思議と身体が覚えていて、スムーズに体験を終えることができた。また、5年前にお世話になった当時のコーチさんも在職していて、にこやかに声をかけてくれたことも嬉しかった。
何回か体験を終え、先輩と私はカーブス石垣登野城店の会員となり9ヶ月が過ぎた。週3回のペースで通っているが、一番の変化は体力がついてきたと実感するようになったことだ。時々出かける旅行の際の駅の階段の乗り降りが楽になった。電車のない沖縄の人間が都会で電車を利用する時、駅の構内の距離を長く感じるし、地下鉄にいたっては、構内にタクシーがほしいくらい気が遠くなるのが通常だったからだ。
ところが最近は旅行中、1万歩近く歩いても苦にならなくなった。カーブスのコーチさんに話すと、「さい子さん、筋肉がついてきたからですよ。すごいですね。」とほめてくださった。最近ほめられたことがないので素直に嬉しくなり、俄然やる気が出てくる。気がつくと、コーチさんは、一人一人のいいところを見つけ声かけてほめてくださる。自分自身が変わることにより、身体も表情も健康的になってきた。
元々固いガチガチの身体が少しずつ柔軟になり、カーブスでの運動が生活の一部となりはじめた今年の1月、「カーブスプリンセス」という4チーム対抗で来店や成果、チーム力を競うイベントがスタートした。4チームは、青、ピンク、黄色、白と4色に色分けされる。今回、私は青チームだった。最初、青チームは2番手だった。なかなかトップになれない。そこで青チームのNさんが自主的にリーダーとなり、青チームのメンバーへ成果の交換を促し、成り行き上、リーダーのNさんにコーチと呼ばれた私は、ヘルプのMさんとともに、青チームの成果の交換へと回った。気づけば週3回のつもりが毎日カーブスに行き、青チームのメンバーさんの成果の結集のためにNリーダーやMさんともに、時間が許す限り動き周り、とうとう1位になった。コーチの皆さんにも「負けず嫌いの青チームメンバー3人組」と有名になっていた。
ライバルが現われた。先にトップだったピンクチームのリーダーKさんが自主的に現れた。Kさんも成果を結集するヘルプのピンクメンバーを増やしていき、私達の青チームは1位になったのもつかのま、すぐに逆転されて2位へ落ちてしまった。そこで「負けず嫌い青チーム」にまた、火がついた。カーブス石垣登野城店は、毎日のようにトップが入れ替わるので、小学生みたいに声を上げたり、一喜一憂したりと賑やかに過ぎていった。青とピンクが競り合っていた2月の後半、ピンクチームがいきなり失速した。同時にピンクチームのリーダーのKさんの姿を見かけなくなった。気になってコーチさんへ聞いてみる。すると、Kさんは具合が悪くなり休んでいるとのこと。私達青チーム3人組はKさんのことが心配になった。これまで競っていたライバルがいなくなると、とても気になり心配するという、昭和の時代のコミックで見たことのあるような乙女チックな友情が芽生えた瞬間でもあった。
また、私は運動音痴で体育系のチームで競うという経験がないので、「カーブスプリンセス」を通して仲間で競う充実感を実感できた貴重な2ヶ月間だった。そして、良きライバルの存在が、より良い成果を出すのだということも分かった。様々な経験とともに2月の末、「カーブスプリンセス」は終了し、青チームは1位になった。嬉しかった。青チームのメンバーさんから「1番だね!」と喜びの声かけをたくさん頂いた。でも、まだ姿を見せない、ピンクチームのリーダーのKさんのことが気になっていたのは私だけではなかった。
「カーブスプリンセス」が終わってKさんが来店した。少し元気がなかった。聞くと胃腸炎になり休んでいたとのこと。私は回復したことを喜びながら「まさか、カーブスプリンセスがストレスじゃないよね-」と冗談めかして言うと、Kさんは真顔になり「そうかも・・・」と答えた。「またー、皆な、あなたのことだけ心配していたんだからねー」と続けると、Kさんが少女のようなはにかんだ笑顔になったので私はほっとした。事実、皆な、Kさんのことが気になり心配していたのだ。
運動中のあちこちから、久しぶりに来店した2位のピンクチームリーダー、Kさんへの賞賛とエールが飛んだ。その都度、Kさんは弾けるような笑顔になった。
カーブスに通っているメンバーさんは、年齢も環境もそれぞれ違うけれど、時間を作り、運動を続けている姿に私はいつもリスペクトさせられる。5年後私もそうなりたい。そしてカーブスへ行けばいつでも私は少女になれるし、少女フレンズへ会えるのだ。私の行く場所がまた一つ増えた。
佳作
「永遠の少女フレンズ・イン・カーブス」
カーブスって
どんな運動?