「結婚するならちゃんと式をしなさいよ」・・・・青天の霹靂とはこの事だった。娘をもつ親なら当たり前の言葉なのかもしれないが、当時、身長160cm、体重85キロ(推定)だった私。
式に関しても彼氏(現在の夫)から「俺、式とかお金ないし、恥ずかしいからやりたくないんだよねー」と言われて、「うんうん(ボテチポリポリ)、今は式とかやらない人とか増えているらしいもんね(コーラごくごく)第一、私が花嫁姿になったところで誰得??って感じだよね(笑)あ、このケーキんまーーー」っていうノリだった私。そんな私が・・・結婚式をあげる??公衆の面前で肩だの背中だのあいたドレスを着る??なんの罰ゲームだろう??そりゃ私だって、子どもの頃は真っ白なウェディングドレスに憧れた。お色直しには何色のドレスを着るんだろう??なんて妄想を膨らませた事だってある。子どもの頃夢物語だった結婚式は、20代も後半になり、結婚をしようとしたその時点ですら夢物語のようだった。式をあげろと言われるくらいだったら、結婚そのものを反対してくれた方がまだ良かったような気すらした。
そんな複雑な感情の中、絶望的な体型、絶望的な自墜落生活の私が結婚式をする事が決まった。そしてその日から、私のダイエット生活が始まった。どんな結婚式でも耳にする。「花嫁さん、キレイだったね」って私も言われるように。最悪、結婚を祝いにきてくれた人達を私の見た目でガッカリさせる事はないように。てっとり早く、当時流行っていた朝バナナダイエットとDVDをみながらする運動(コアリズムとかビリーズブートキャンプ)をはじめてみた。ダイエットを決めてからも「食べる」という快楽への執着を捨てきれない私。運動はしてもいいから、食べたい物を我慢する事だけはしたくない。
そんな気持ちからのスタートだった。きっと、普通体型の人がそんな気持ちでダイエットをしても失敗に終わるだろう。でも今思えば、むやみに食事制限をするダイエット方法を選ばなかったのは正解だったと思う。
運動もろくにしない、仕事に行く以外は食っちゃ寝生活をしていた私が、午前中はバナナだけ、朝と夜に思いっきり汗をかく位の運動をした結果、緩やかではあったが体重が落ちていった。
毎日重苦しくて仕方なかった身体が少しずつ動かしやすくなって、何を着てもピチピチだった服にほんの少しのゆとりができはじめた。
顔が少しスッキリして肉で埋もれていた首がちょっとずつ確認できるようになってきた。朝晩のDVD見ながらの運動・・・ごはんやお菓子を我慢しなくても結果はゆっくりでてきていた。ただ、とても疲れていた。段々運動する事が苦痛になり、頭の中には太っている事でバカにされた記憶や、ダメだった事を思い浮かべ、それをバネにしようという気持ちに支えられていた。結婚式を迎える希望よりも、ひたすらネガティブな感情を運動にぶつけていた。
そんな時だったと思う。友達のMちゃんから「まっちゃん、カーブスの体験行ってみない??まっちゃんの事だから行くと思って予約取っといたよ。時間的都合が悪いなら電話して変更するからね」と、半強制的なお誘いをいただいた。
カーブスの存在自体は知っていた。ただ、カーブスの営業時間が私の就業時間と完全に重なっているのだ。とてもじゃないけど、通えるような時間帯ではない。それでも体験だけでいいなら・・・と思って、1時間ほど早めに仕事を終わらせてもらい、カーブスの体験に行った。行ってみたら計測。ダイエット始めた当時85キロあった体重は69キロまで落ちていた。今やっている運動、ダイエットを始めたきっかけ、どれだけ自分ががんばっているのか、カーブスになんか行かなくても私はダイエットできている、という事をスタッフさんに伝えたと思う(勧誘を警戒しての事だった)。そして体験・・・。私が運動を毎日しているという事を伝えたスタッフさんは今思えばけっこうハードに一回目の体験をさせてくれたように思う。(体験であんなにハードにマシーンを動かしている人は未だに見た事がない)思いっきり筋肉を使い、色んな事をしゃべりながら運動して終わった時、すごくいい気持ちになれた。
今まで一生懸命がんばって運動してきたつもりだったけど、とても苦痛だった。運動が楽しいだなんて思えなかった。毎日筋肉痛の身体を支えて生活していた。
3ヶ月だけ・・・3ヶ月だけでいいからカーブスをやってみようと思った。
カーブスの営業時間と私の就業時間は丸かぶりだったけど、お昼休みに通えばいい事に気付いた。3ヶ月位なら問題ないだろう。毎日黙々とDVD相手に運動するより、ここで楽しく運動したいと思った。
それから孤独だった運動時間はあっという間に楽しい時間に変わり、太った自分自身を責めたて、誰かを見返す事を目標にしていたドロドロとした感情は、結婚式という目標に向けて大切な人を喜ばせたいというポジティブなキラキラしたものになっていった。
運動したらヘロヘロになっていた身体はワークアウト後にはむしろ元気になっていた。3ヶ月だけ・・・なんて思っていた気持ちは早々に吹き飛んでいった。
それから1年と少しの時間が流れて結婚式当日体型を理由に妥協する事なく選んだウェディングドレスに身を包む。お世辞にもナイスバディとは言えないふっくらした花嫁姿の自分が鏡に映る。でも決して見苦しくはない(と信じたい)遠方はるばる来てくれた祖父が「陽子ちゃんじゃないみたいだねぇ」とうれしそうに呟く。久しぶりに会う親戚のおばちゃんが「あんたキレイになったねぇ」と声を掛けてくれる。かわいかったりキレイだったりする友達に囲まれても気後れすることなく写真の中心に写る。
太っている事で誰にも迷惑かけていない。不健康でも自分の問題なんだからいいじゃないか。なんて驕っていた自分が少し恥ずかしくなった。みんな心配してくれていた。痩せて健康になった事を喜んでくれている。
色んな人に支えられて人並みの幸せな幸せな結婚式を迎える事ができた。
それからもカーブスは続けた。妊娠・出産をきっかけに2年程休会したが、子どもを保育所に預け始めてから再開した。出産の時、子どもを抱っこする時、追いかける時、もしも昔のような体型・体力・生活習慣だったらどうなっていたんだろう??と思うとぞっとする。子どもにとって元気で健康なママでいるためにこれからも自分の身体を大切にしていこうと思う。
佳作
「一人じゃないから」
カーブスって
どんな運動?
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