気持ちが沈んだままにカーブスの入り口に立った。心地よいアップテンポのリズムと、「とみこさん!こんにちは~」と若くて美しいコーチが、元気よく大きな声で私を迎えてくれる。迷いは吹っ切れて私の身体は一気に運動のモードに切り替わった。40~50歳代の女性はプロポーションや美に対する意識が高いようで、専業主婦らしき人なのか午前中のカーブスは意外と若い女性が多いことに驚く。夕方には仕事帰りの女性も見受けられる。私はもう高齢者の仲間に入るのだろうか~と思いつつサーキットの輪の中に入って行く。

 4月には筋トレを初めて10ヶ月目に入った。昨年の今頃はまだ福祉施設の管理者という立場でフルタイムの仕事をしていたことが遠い昔のように思える。高齢者福祉施設では、私よりも若い人がアルツハイマーや、糖尿病など生活習慣病で介護を受ける側になっている方が多い現実を複雑な気持ちで介護していたことを思い出す。 30歳の時に、主人の不倫が発覚して以来、夫に養われるという隷属的な環境から逃れたい一心で、経済的に自立する道を選んだ私は、子供の学資の為に働くという時代からやがて自分のキャリアアップの喜びに変わり、気がつくと40年近く働いていた。

 重い病気を患ったことの無い健康体を授かったことを有難く感謝する毎日でしたが、今年70歳を迎えてしまった肉体は階段を上り下りする度に、あちこちでギシギシと唸るように、体力の衰えを感じる時が多くなってきた。 (歳のわりにはとっても若いですね~)なんて言われると(若さの秘訣は、好奇心と行動力と異性を意識することよ!)と強気で答えていた。確かに60歳を過ぎての外観は大きく個人差が出るものだ。仕事を辞めてから家庭に入った私は、夫を異性と感じることも無く、初老の男の食事係のような存在になっている自分の姿を認めたくない気持ちが何処かにあり、悶々とした日々を送っていた。身体と心が「アドレナリンやドーパミンの分泌がなくなっている~!」と叫んでいるようだった。そんな時、近くのショッピングセンターで目にした垂れ幕が、私の心を捉えた。「30分間女性だけの健康体操」だった。ビジネスウーマンや「できる男」が仕事帰りに、肉体を鍛え、精神を集中する為に通うスポーツジムに憧れていた私は、マシンで筋肉を鍛えることに魅力を感じた。くびれが無くなった胴回り、薄手のセーターを着ると、ブラジャーの上下に肉の盛り上がりがはっきりと判る胸回りを何とか昔のようにすっきりとならないものか~と好奇心が湧いてきて自分への挑戦をしてみたくなった。頂いたトラクトを数枚読み進むうちに、私の脳はしっかりと「筋トレ=発汗=脂肪燃焼=基礎代謝向上=筋肉強化=膝の痛み解消=歩行が楽=老化予防=ストレス解消」と健康になる循環作用をシミュレーションしていた。また30歳を過ぎる頃から何も運動をしないと毎年1%づつ体脂肪が増えている~という表現が衝撃的であり、ある種の戸惑いとあせりを感じていた。私の身体にはすでに40%の体脂肪が付着しているのか~!これから毎年1%づつ減少させて、元の体型を取り戻すには時間が足りない!京都大学の山中教授によって発見されたIPS細胞(万能細胞)の実用化はもうすでに始まっていて医学の進歩は近い将来人間の「不老長寿」を可能にしてくれるかもしれない。

 T細胞(免疫細胞は運動によって筋肉から分泌される・老いと戦う細胞)などの応用化を待つには残された時間が無い!数年で若さを取り戻したい!そう思った私は、翌日の無料体験を申し込み、体験が終わると同時にメンバー登録をして帰った。それから週に3回のカーブス・フィットネスクラブ生活が始まった。「このマシンはこの筋肉を意識してワークしてくださいね~」可愛いく肌が艶々とした、若々しいコーチが一人ひとりに声かえしながら正しいマシンの使い方を教えてくれることも有難い。言われたとおりに筋肉を意識して、力いっぱいマシンを動かすと結果が出てくる仕組みになっている。途中の水分補給も欠かさない。マシンとステップボードを、2周りし終えると今度は床でのストレッチ運動に移る。筋肉をほぐすようにゆっくりと数えながら筋肉を伸ばす、ストレッチメニューが終わる頃には、今まで温存していた身体中の熱が汗と共に一気に噴き出てくる。「とみこちゃん!今日はもう終わったの?」と友人のももちゃんが声をかけてくる。カーブスでの運動を始めて3ヶ月経った頃、同期会で出合った彼女に「マシンを使って運動してるけど、とても体調が良くなったよ~一緒に筋トレしようよ」と誘ったのだった。彼女とは小学校の途中から高校までの同級生であり、家も近い。彼女は大学で看護学の講師をしていたが昨年春に退職していた。(医者の不養生)という諺(ことわざ)のように、長年多くの医者に仕え、たくさんの病人を看護してきた彼女は肥満と腰痛に悩まされていたし、成人病いわゆる生活習慣病寸前の状態のようだった。そんな彼女に筋トレの大切さを知って貰おうと、私が読んで衝撃を受けた時のトラクトを郵便受けに入れておいた。それから間もなく彼女もカーブスメンバーになった。「とみちゃんのお蔭で毎日汗をかいて、本当に体調が良くなっているよ~誘ってくれてありがとう」と彼女からお礼を言われると、素直に(良かった~)と心から嬉しくなる。毎月初めの測定も楽しみで、変化は確実に数値となって現れるので努力が報われる気がする。「とみちゃん数値変化した?」「うん体重と体脂肪が少し減ったよ」「私も少し体脂肪が減ったけどまだまだ減らさないとね」「そういえば胴回りスリムになったようね」「何となく引き締まったようね」とお互いの変化を報告することも励みとなっている。一人で長生きするよりも友と一緒に元気で長生きする方がどんなに楽しいことかとつくづく思う。

 今年3月の終わりの日曜日、孫が大学入学する為に家族みんなで熊本まで荷物を運んだ。 帰りに夫と私は満開になった桜と、新緑で萌える熊本城の石の階段を登った。天守閣へ昇る6階までの階段は、途中の踊場で息を整えながらリズミカルに登っている私に「とんさん、休まんでいいのか?足は痛くない?」と夫も驚いていた。確実に筋力が付いていることを実感した。また私は毎週日曜日に礼拝前の30分間、ゴスペル合唱隊のメンバーとして若い人と一緒に歌の練習をしているが、ソプラノの高い声が良くなったことを他のメンバーが気づいてくれた。「筋トレの効果よ!」と自慢している。 現役時代に来ていた9号サイズのスーツをもう一度着たい~メンバーになった時に立てた、目標も達成する日が近いことを感じている。 4月初めに頂いた100回記念のピンクのTシャツは余裕のMサイズでした! 自分の身体は自分で作る。 筋トレは女性を救う! カーブスさんありがとう! 明日の私は今日よりも輝いている!