熱中症になりやすい人ってどんな人?予防のために何をしたらいい?【専門家監修】
夏になると、気温や湿度の影響で熱中症にかかりやすくなります。実は、2023年5月~9月の熱中症による救急搬送人員は91,467人と、2008年の調査開始以降2番目に多いと発表されるなど、猛暑による熱中症は社会問題化しています。年齢や体調によって熱中症リスクが高くなりやすいケースもありますので、十分に注意が必要です。熱中症にかかりやすいのはどんな人?どう予防したらいい?を解説していきます。
どうして熱中症になるの?かかりやすいのはどんな人?
人間の身体は、平常時は体温が上がっても汗や皮膚温度が上昇することで体温が外へ逃げる仕組みとなっており、体温調節が自然と行われます。しかし、暑さや体調不良、睡眠不足などの条件が重なると体温の上昇と調整機能のバランスが崩れ、脱水症状を起こし、どんどん身体に熱が溜まってしまいます※。
特に中高年層は暑さに対する感覚機能が衰えて暑さを感じにくくなり、体温の調節機能も低下します。すると、体内に熱が溜まりやすくなり、そんなに暑さを感じていなくても、気づかないうちに脱水症状を引き起こす可能性が高まるため注意が必要です。
熱中症になりにくくするにはどうしたらよい?
熱中症対策で「水分補給」が重要であることは多くの方が知っています。では、補給された水分はどのように体内に蓄えられているのでしょうか。成人の体の約6割は水分で構成されていますが※、実はその水分の約43%は筋肉に貯蔵されており、全身で一番大きな貯水庫になっているのです。つまり、筋肉の量が少ないと補給できる水分が不足しやすいため脱水症状がおこりやすく、重症になりやすくなります。また、加齢に伴って筋肉量が減るため、中高年層はより注意が必要です。さらに、汗をかくと血管内の水分が失われ、そのままでは血液の量が減り濃縮されてしまいますが、筋肉に十分な水分があればすぐに血管内の水分は補充されるというメリットもあります。
筋肉量が熱中症のリスクを左右する?
筋肉には、水分を貯蔵する役割のほかに、体の末端の血液を心臓に戻すポンプの役割があります。血流がよくなると、体温を調節する力が高まり、体の熱を外に逃がすことができます。一方で、筋肉量が少ないと、心臓に血液を戻す働きが低下するため、熱を体に溜めやすくなり、脱水症状や熱中症を引き起こしやすくなります。
筑波大学大学院人間総合科学学術院教授、医学博士の久野譜也先生に、なぜ筋肉量が少ないと熱中症になりやすいのか、またどう対策をしたらよいかを伺いました。
筑波大学大学院人間総合科学学術院教授。医学博士。スポーツ医学の分野において、サルコペニア肥満、中高年の筋力トレーニング、健康政策などを研究。2002年に「日本全国を元気にする」というミッションを掲げ、大学発ベンチャー・(株)つくばウエルネスリサーチを設立。「科学的根拠に基づく健康づくり」という基本概念のもとに、超高齢化に伴う健康課題に対して健康情報の発信のあり方やまちづくり、コミュニティの再生などのアプローチを含めた解決策を提案。『筋トレをする人が10年後、20年後になっても老けない46の理由』(毎日新聞出版) 『筋トレスイッチ するかしないかが人生の分かれ道』(草思社)など著書多数
高齢の方ほど、こまめな水分補給と継続的な筋トレを
久野先生
体に蓄えられている水分量は成人男性で体重の60%にものぼりますが、歳をとるとともに減り、高齢期では約50%にまで減少します。そのため、高齢者は少し汗をかいただけでもすぐに脱水状態になりやすい体質と言えます。暑い時期に高齢者が熱中症になりやすいのはそのためです。
体内の水分量が不足すると、熱中症だけでなく、血液の粘性が高くなり、血栓ができやすくなって脳卒中や心臓病のリスクが高まることや、口の中に雑菌が繁殖しやすくなり誤嚥性肺炎や気管支炎の原因になることも考えられます。さらに、めまいや失神を起こして、転倒骨折から要介護に至ってしまう危険もあります。
あわせて、加齢とともに、のどの渇きを感じにくくなるという意識も必要です。水分不足を自覚していない“隠れ脱水”となり、突然倒れてしまうこともあります。日中を通して、のどが渇いていなくても、100〜200mlずつ飲むというように、こまめな水分補給を習慣にしてください。
筋肉には水分を溜める役割があるため、筋肉量が多いと熱中症予防につながるとも言えます。今後も暑い夏が続くことを考えると、特に中高年以上の方は、無理のない範囲で筋トレを継続的に行うことで、暑い夏を乗り切ることが大事なのではないでしょうか。
国が初めて「筋トレ」「サーキットトレーニング」を推奨
厚生労働省は、日本に住む一人ひとりの健康を実現するための施策「健康日本21」の改定を10年ぶりに行い、2023年11月に示された方針のなかで初めて「筋トレ」、高齢者においては「サーキットトレーニング」も推奨されました。主にトレーニング効果を調べた研究でも、筋トレにより筋力、身体機能、骨密度が改善し、高齢者では転倒や骨折のリスクが低減することが示されており、国としても具体的な運動方法として推奨しています。
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